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「いのちのことば」誌 2004年掲載
本書の著者は川崎市にある高津教会の牧師であり、ウェスレイ研究者としても知られ、また日本福音主義神学会など多くの分野で幅広くその神学活動を展開しておられる器である。評者は幾度かその説教に直接耳を傾けたことがあるが、それは熱誠にあふれ、聴く者を捕らえて放さない力あるものであった。この度、その礼拝説教の一部がこのようなかたちで一書にまとめられたことを心から喜びに思う一人である。
本書の一貫したテーマは「祈り」であり、旧約聖書の人物の中から、アブラハム、イサク、ヤコブ、モーセ、ダビデなど２４名が取り上げられている。それらの登場人物の祈りが４０回にわたって考察されており、アブラハムについては４回、ヤコブについては３回、モーセについては４回などというように、一人の人物について複数回にわたって説教されている場合もある。
評者は「ハガルの祈り」の部分などはいつしか書評することを忘れて涙しながら読ませていただいた。著者が「神学者」であり、「牧会者」であり、「説教者」であることが見事に結晶している説教であると思わされたことである。このことは、本書に収められているすべての説教に通じる性格であり味わいであると思われる。
本書におけるそれは狭義の「祈り」に留まらない。そこでは常に、一人一人の人物が神とどのように対峙し、神は彼らにどのように応じられたかがつまびらかにされている。しかも、そのことが、それぞれの登場人物の固有のコンテキストにおいて、それなりに固有の意味と味わいをもって丁寧に述べられているのである。本書を一日一章づつ読み進めていくような方法によっても多くの信仰的な益を得ることができるものと思われる。
評者は「説教」ということにこだわり続けている者の一人として、これらの説教に「み言葉を教える」という味わいを越えて「み言葉を証言する」という味わいが更に深まれば、一層の輝きを増すものとなるであろうとの感想と期待をもって読ませていただいた。